うつくしい、クセ |
私の過去を紐解いてみると、絵師であったという一つの事実がある。
もう、かれこれ二十一年前になろうか…。
窯元での修行に没頭し続けたあげく、その作品に絵付けを施す道を選んだのだ。
職人もあつまれば、様々な天性を持ち合わした面白い人間の世界だ。
「生まれつき」という言葉はほんとうにある。天才的とも思える筆運びに、いくどと息を
飲んだだろう。その道には多くの達人がいるということに私は悔しくて泣いた。
私は、職人として必ず一つ何処かに自己の表現を施す癖がついていた。
例えば、鳥獣戯画図に描かれる兎の耳を逆に大きく描く事や、小紋を人より細かく描く癖。
懐かしい…。 ここにあるディジェ・ゴメズの傑作「FUGUE」にも何かしら窺える美的な
官能と、随所にゴメズ独自のこだわりの癖が見てとれる。美しい癖だ。
※Dseign:Didier Gomez/FUGUE